実質賃金方式について
通常の会社が労災保険に加入する際の保険料の算出は実質賃金方式が用いられます。実質賃金方式は、その事業が1年に支払った賃金の総額を出し、それに保険料率をかけることで算出されます。その労災保険料を事業者が支払うことで労働災害が起きた時、従業員に様々な補償が行われます。
この実質賃金方式は建設業であっても原則的な制度になっています。しかし、実際の建設業労災保険の保険料算出は別の方式がとられることがほとんです。その方法とは、ひとつの事業にかかった総費用に労務比率という比率をかけて賃金総額を算出する方法です。
建設業ではひとつの事業に多くの会社が参加し、多重構造の請負関係を構成します。建設業では元請けが事業に関わる全ての労働者の保険料を一括して支払いますが、保険料を算出するための賃金総額をひとつひとつの会社ごとに計算していくことは現実的ではありません。そこで事業全体にかかった費用に国が定めた労務比率をかけて、おおよそこれくらいかかるだろうという賃金総額を算定することが許されています。
こうしておおまかに算定された賃金総額に保険料率をかけたものが、元請けの支払う建設業労災保険の保険料となるのです。
この労務比率はいくつかの業界によって変化しますが、建設業では21%と定められています。1億円の事業であればその21%に相当する2100万円が人件費ということになるのです。この2100万円に保険料率をかけた額を元請けが支払うことで、事業に関わる全ての労働者は労災時に補償をを受け取ることができます。