労災保険の費用徴収制度
労働基準法により人を雇用して事業を行う者は、業務中に起きた事故によって生じる労働者の損害を補償することが義務付けられています。特に建設業など重大な事故の可能性がある仕事場では補償額も大きくなりがちであり、事故が起きるたびに企業の経営に大きなダメージを与えてしまいます。さらに労働者の視点からも、企業が補償を支払えなくなってしまうと非常に苦しい立場に置かれてしまいます。そのために国は労災保険の制度を用意し、事業者の労災保険への加入を義務付けているというわけです。
建設業において労災保険は重要であると述べましたが、それでも未加入事業者の問題は後を絶ちませんでした。たとえ事業者が保険料を支払っていなくても、弱者保護の観点から労災に遭った労働者には補償が行われます。しかし、それではまじめに保険料を支払っている事業者にとって不公平であるとして、未加入問題を解決するために費用徴収制度が強化されました。
費用徴収制度は保険料を支払っていない期間に起きた労災に支出した補償金を企業にそのまま負担させるというものです。建設業労災保険に加入手続きをしていない事業者で既に指導、勧告を受けていた事業者に対しては労災の補償に支出した金額の100%、まだ指導や勧告を受けていなかった事業者に対しては支出した金額の40%が徴収されるようになったのです。
このように労働者を保護し、公平な制度としての労災保険を維持するために加入を促す様々な試みが行われています。